Archive for the ‘Design’ Category

九州新幹線と水戸岡鋭治さん

Sunday, February 13th, 2011

Kyushu Shinkansen "Tsubame"Kyushu Shinkansen "Tsubame"
Kyushu Shinkansen "Tsubame"Kyushu Shinkansen "Tsubame"

水戸岡鋭治の「正しい」鉄道デザイン―私はなぜ九州新幹線に金箔を貼ったのか?」という新書がものすごく興味深く、何度も読み返している状況につき、自分的メモを兼ね、以下まとめておきたい。

この書籍の著者である 水戸岡鋭治さん九州新幹線800系「つばさ」の外装・内装を手がけた工業デザイナー。九州新幹線以外にもJR九州の特急列車を主として鉄道デザインをいくつも手がけており、20数年に渡る実績と各案件での実践内容がこの書籍にはまとめられている。

この書籍、交通新聞社から発行されていることもあり、パッと見、鉄ちゃん向け雰囲気だけど、「実は違うのでは?」という個人的印象。工業デザインとは何か? 職業デザイナーとは何者か? それらの本質に迫るフレーズがいくつも散りばめられてる感じがしており、鉄道に興味がない人でも十分価値ある一冊な気がする。

職業デザイナーとは何者か? かたちを整えたりカッコよくしたり、といったことはデザイナーでなくともできること。著者は「ビュッフェ(食堂車)」を引き合いに、利用者の経験や認知に重きをおいたデザインのあるべき姿を説いている。

なぜ、食事をするということが大切なのか。それは食べるという行為が記憶と深く結びついているからです。

乗客は列車の中にいるとき、目で景色やテーブルの形を見ている。また触覚でテーブルの木の質感などを感じ取っています。列車デザインやインテリアの専門家だったら、それを注意深く甘受し言語化するでしょうが、一般の人はそんなことをしません。目ではそのテーブルを快いものだと捉えているけれど、決して言葉にはなりません。そして時がたてば記憶は曖昧になります。

しかし、そのテーブルでおいしいものを食べたとする。そうすると、食べ物の味わいとともに、テーブルの形や素材、質感が一挙に記憶される。不思議なことだが、これは事実です。人は五感を使って体験し、記憶を残していく。その五感の頂点にあるのが味覚と視覚なのです。だからもっとも強い印象を脳に与え、強い記憶として残っていくわけです。

ですから「おいしい」というのは、ただ舌の感触だけではない。空間が素晴らしかったりサービスがよかったり、心地よい音楽が聞こえたり、一緒にいた人が素敵だったりしたこと、そのことが合わさって人は「おいしい」といっているのです。

(中略)

つまり列車の中で食べた食事がおいしければ、鉄道の旅が楽しかったと乗客は記憶する。そうすれば懐かしく思い出して次の機会も列車に乗ってくれる。だからこそ、ビュッフェは必要なのだと私はJR九州のビュッフェ反対派に訴えたのでした。

(書籍より一部省略のうえ引用)

「経験デザイン」という言葉でまとめてしまうのはカンタンだけど、それをここまで言語化・具体化できるデザイナーは少ない気がしてすごく興味深い。

九州新幹線800系には残念ながらビュッフェはないものの、鉄道の旅を楽しくする工夫がいくつもあり、書籍でも紹介されている。

例えば、内装に施された、金箔、漆、蒔絵…など伝統工芸の数々。とにかくものすごく豪華で、普通車にして、東海道新幹線のグリーン車や新しい東北新幹線「はやぶさ」の「グランクラス」を優に超えて、「御料車(皇族専用車)」のような印象。旅の盛り上げ役として機能している。

また、外観のいたるところにしつこいぐらいに列車名を表示しているのも興味深い。上掲の写真は2010年春に鹿児島中央駅で撮影したもの。例えば先頭車両の写真には数箇所に「KYUSHU SHINKANSEN」「つばめ」やつばめマークが見える。写真のどこかに列車名があれば、それをもとに他の写真がどこでいつ撮ったものか推理できる…という旅を楽しくするための一工夫なのだとか。

「旅」という経験を最大価値化するために施されたデザインの数々。経済的論理・効率性を重視した設計の東海道新幹線とは対照的で、人のぬくもりとかホスピタリティを感じる不思議な乗り物であるように感じる。とか思っていたら、案の定ライバルは「リゾートホテル」だったようだ。

書籍では、デザインが廃線の危機に瀕していた路線の復興に寄与した実績も紹介されている。

一躍大ブームとなった、和歌山電鐵 貴志川線 貴志駅の「たま駅長」。このブームにも水戸岡鋭治さんが関与していたとのこと(列車・駅舎のデザインを担当)。 Wikipedia で駅舎写真 が見られるが、屋根はたま駅長の顔を模しているし、「TAMA」の4文字が「貴志駅」以上に目立ってるあたり、遊びごころにあふれてておもしろすぎる!

乗客数が減少傾向にあった路線でも、列車や駅舎のデザインで話題作りを図って復興し、かつ、地元住民を巻き込んだ盛り上げで、街づくりの起爆剤にもなったこの事例は、他でもいろいろな活用ができそうで示唆に富んでいるように思う。

それ以外にもいろいろ興味深い話が書籍には詰まってて話は尽きないものの、最後にひとつだけ。

九州新幹線800系「つばさ」はJR九州の予算の関係上、JR東海・JR西日本が開発した東海道・山陽新幹線700系「のぞみ」をベースに作られているようで、デザイン上の制約はものすごくたくさんあったはず。その中でもいろんな工夫により存在価値を高めていく。そんな工業デザイナーとしての立ち振る舞い・心構えを表現したフレーズがあったので転載しておきたい。

私が関わっている列車デザインの仕事というのは、99%の見えない部分のよさをわかってもらうために、1%の見えている部分を光り輝かせる仕事です。つまりデザイナーの仕事というのは、なかなか見えにくい仕事を頑張ってきた人の、その仕事を世間に認知させていく仕事なのです。

(書籍より引用)

ブランド

Saturday, September 18th, 2010

「ブランドとはロゴマークや形を揃えることである」

こういう考えがまだまだ根強いみたい。
けど、昔いろんな方から教えていただいたところでは、
ブランドの本質はそういった表面的なものではない、
目に見えない深いところにあるようで。

体験・品質・効用を保証して、継続購入を促す仕組み。
とある大学教授はそんなことを言っていたような。

Procter & Gamble (P&G) の石けん「IVORY」は
それまで長い棒状の石けんを切り売りしていたのを
小分けにして「IVORY」と名前を付けることで、
指名買い・繰り返し買いしやすくしたのだとか。

brand の語源は burned で、
特定の家畜に焼き印を押すことで
他の家畜と区別できるようにしたのが由来…とかとか。

書き出すとキリないですけど、
そんなこんなで、
もう少しブランドへの理解が深まるといいな、と…。

Macのダイアログボックス

Friday, June 19th, 2009

mac_dialog2

UIの検討にあたって、Macでなくていいと思う…、その具体例の1つがこのダイアログボックス。

これはシステム終了時の確認ボックスで、2つのボタンから構成される。1つめ「キャンセル」ボタンにはグレーの枠が付いている。2つめ「システム終了」ボタンは全体的にグレーで着色されている。

ここで問題です。returnキーを押したとき、どちらのボタンが実行されるでしょう…?

Macの操作に使い慣れていない人がこの場面でキーボード操作をしようとした場合、相当な頻度で困ってしまうのではないでしょうか。というのは両方のボタンにフォーカスがあたっているかのような装飾がされていて、ボタンを押したときの挙動が予測できないと思われる…からです。

Windows、ゲーム、テレビなどGUIの多くは、画面上のフォーカスは1つで、キーボード操作として可能なのは、それを実行するか否か、他要素にフォーカスを移動させるか、キャンセルするかの3通りくらいだと思います。ただ、なぜかMacだけそのあたりの勝手が違っていて、”2つのフォーカス” という、他でみられない現象が日常のように発生しているように見受けられます。

ちなみにこのボックスの “ただしいキーボード操作” ですが、

  • スペースキー押し下げ → 「キャンセル」実行
  • returnキー押し下げ → 「システム終了」実行

こんな感じになってます。慣れればなんてことないんでしょうけど、難しい…。自分的にはMac OS Xを私用で使いだしてから1年半くらい経っているのにいまだに慣れず、よっぽどWindowsのほうが単純で直感的に思えてきます。もっともMac OS X以前のMacはもともとキーボード操作よりもマウス操作を基本に考えられていたように思えるので、Macユーザの多くはマウス操作に徹することで混乱回避しているのかもしれませんが。

“UIといえばMac” みたいなイメージやブランドがあるように思いますが、このような例がところどころ見受けられます。また改めて書いてみたいと思います。

Cut and Paste 2009 Tokyo

Tuesday, June 2nd, 2009

Cut and Paste 2009 Tokyo

Cut and Paste 2009 Tokyo というイベントに同僚・知人と行ってきました。

このイベント、ひとことで言うと、敏腕クリエータがその場でテーマに沿った作品を仕上げ完成度を競い合うデザイントーナメント、といった感じで、見る側は競技参加者のスピード感にただただ圧倒されるばかり。開始直後からひたすら手をうごかし、あっというまに作品が完成し、”いつ考えてたんだろう?” と思っちゃうほど。

完成品をみることは多々あれど、制作途中の作品がプロジェクターに投影され、一部始終見られるというのはありそうでないことで、相当おもしろい感じ。15分とかいうありえない短さの中での制作なので、ペンを持つ手が震えて描く線がぶれっちゃったりするんだけど、それが逆にアーティスティックな演出になって高い評価を得た、みたいなこともあって、世の中セオリーが全てじゃないなー、などいろいろ考えさせられたりもする内容でした。

みんな気合い入ってるし、作品も発言もかっこいいし、といった感じでいい刺激になったので、またこの手のイベントがあったら参加しようと思います。

Macでなくていい

Saturday, May 2nd, 2009

UIを考えるときにMacが全知全能の神のような扱いで発言が聞かれることがあるけれど、
個人的にはそういう考えはなくしてしまいたい。

Macが長きにわたって高い評価を受けてきたのは確かだけど、
評価の根底を支えてきたのは、
Appleと直接の関係を持たない、数多くのデザイナ・エンジニア・研究者であり、
Macは彼らの成果を組み合わせた一例に過ぎない。

UIの歴史に「もし」があるとするなら、
組み合わせ次第で「MacのようなMacじゃないもの」「MacのようなMac以上のもの」
が誕生した可能性だってあったかもしれない。

つまるところ、
UI検討時の参考となるのは、Macという組み合わせ例ではなく
それを構成する要素一つ一つであるということ。
Macは具体的で話題にしやすいけれど、そこから生まれる物は結局Macに似た何かでしかない。
その根底に意識を持っていかないと何ら本質的な検討はできない。

近況

Friday, April 10th, 2009

12月を最後にだいぶ更新をサボってしまった。この間もいろんなことがあったので、以下まとめ。

  • Canon EOS 5D を買った! 中古だけど。いままでの一眼レフはすべて父親の借り物だったので、5Dが記念すべきマイファースト一眼レフ
  • 1・2月、その5Dでひたすら富士山を撮ってました。究極はダイアモンド富士。圧巻
  • 2月下旬には、金沢・高山・白川郷へ。午前3時に起床、始発の高山本線にのり、車窓から顔出して、ぬおーとかいいながらひとり写真撮ってた自分は相当怪しまれてたと思います。気にしない
  • 3月1日、東京レインボーウォークへ。「踊る大捜査線 レインボーブリッジを閉鎖せよ」の緊迫した世界とは無縁のゆるーい雰囲気だけど、楽しかった。湾岸署の方たちも同席
  • 3月の3連休+1日分の有休で、京都へ。丸4日もいたのに名所を回りきれず。さすが京都
  • この数ヶ月、写真の話題ばかりだったけれど、たまには他の話題を。「エンジニアにもわかる『ユーザーインターフェース設計』」という記事を書きました。反響も多数いただいており、何よりです
  • 友人がおしえてくれたブログをきっかけに、「自分の仕事をつくる」を読み返している。この本の意味するものがよりよくわかるようになりたい
  • 放置状態だった Twitter を再開してみました。また放置するかもですけど

唯一無二のタイポグラフィー

Friday, March 21st, 2008

img_0370.jpg

PHOTO IMAGING EXPO 2008シグマブースで見つけた素敵なパネルデザイン。

このタイポグラフィーはひょっとして、と自宅で調べたところ、このあたりに記載があるとおり、やはり福井信蔵さんだった。

文字の組み方ひとつで、担当デザイナがわかってしまうのはいいのか悪いのか。福井さんの類稀なる才能に改めて感嘆するとともに、国内のグラフィックデザイン業界全体的に福井さんにぜんぜん追いついてない感じで少し寂しい気もする。

#メモ撮影につき汚い写真でごめんなさい

UI のためのホテル業界本

Tuesday, January 15th, 2008

自分的に UI を考える上で常に大事にしたい2冊の本。

一見畑違いのようだけど、ホテルのサービス精神・ホスピタリティといったものは、ウェブデザイン・プロダクトデザインにそのまま適用可能で、これらを知ることは UI の目的を再認識させてくれると思っている。

帝国ホテル 感動のサービス―クレームをつけるお客さまを大切にする

わたしはコンシェルジュ―「けっしてNOとは言えない」職業

PHSでは問い合わせられない日本郵便の窓口

Tuesday, January 15th, 2008

japanpost.png

お問い合わせ によると、電話での問い合わせ先は、

  • フリーコール(0120で始まる番号)
  • ナビダイヤル(0570で始まる番号)

の2つ。固定電話より電話料金が高い携帯電話・PHS向けに、フリーコールとは別に代替番号を用意するのはよくあるが、その代替番号がナビダイヤルというのはあまり見ない気がする。

OCN|「全国統一番号」(ナビダイヤル)の料金について

※ PHSからは接続できません。

とあるとおり、PHS ではナビダイヤルに電話できない(理由は不明)。フリーコールも念のためかけてみたけど PHS を接続できる設定になっていなかった。

問い合わせフォームでその旨を書き送信したところ、返信メールが来て関係部署にその旨伝えるとのこと。肝心の問い合わせ内容については、担当部門の住所だけ返信メールに記載があり、そこに問い合わせてくださいとのこと。住所をもとにネットで電話番号を調べて PHS で電話したところ、郵便局と郵便事業は同じ住所でも番号が違います、と言われ、電話をかけなおすことになり、ああもうなんというか。

オープンカーのようなウェブサービス

Friday, December 7th, 2007

4opencars.jpg

少し前の話になるけど、11月初頭に東京モーターショーに行って来た。

ハイブリッドやクリーンディーゼルといった環境技術、日産GT-RレクサスIS-Fといったスポーツカーと並び、自分的によく目に留まったのがオープンカー。写真にあるような感じでオープンカーの展示がよく見られた。

最近の流行としては、爆発的な加速やパワーを売りにしたスーパーカーという流れからオープンカーのような手軽な楽しさを特色としたクルマのほうが人気が変わってきているみたい。

小さめのエンジンパワー、車高の高さに加え、細いタイヤに街中の乗り心地重視のサスペンションと、クルマの運転が好きそうな方々にはことごとく訴求力のないスペックだけど、屋根が外せる、ただそれだけで人はオープンカーに惹かれるらしい。

思うに、プロダクトの魅力はきっと技術力だけじゃないんだな、と。技術力はモノの訴求をする上でいくつかあるうちのひとつでしかなく、技術力がまあまあでも、他の要素で俄然、人の心を捉えるプロダクトになりえる。

技術を隠蔽し、肩肘張らず、人が愉しむことにフォーカスを当てたプロダクト。ウェブ関係でもそんなサービスが増えると、素敵かなと思う。

#写真:日産マーチ(左上)、プジョー207(右上)、フォルクスワーゲンビートル(左下)、ミニ(右下)